「当たり前」はもうない今日では、常に考えることが要求される世の中でもあります。
● どういうところで一番いい考えが浮かぶか?
古代からの人類共通のテーマでもあるこの問いに対して有名なのは、
馬上、枕上(ちんじょう)、厠上(しじょう)。いわゆる、「三上」という言葉です。
超難関の科挙という国家試験が古くから行われていた中国では、このテーマが真剣に考えられていたようです。上記の三上は中国の欧陽修という人が残した言葉です。
馬上は、いまなら、通勤電車の中かクルマの中ということになるでしょう。
枕上は、目をさまして床の中に入っているときに、いいアイディアが浮かんでくることを言っています。
トイレの中は集中できる。まわりから妨害されることもない。ひとりだけ城にこもっているようなものです。
いくらか拘束された状態だが、ほかのことをしようにもできない。しかも、いましていることは、とくに心をわずらわすほどのこともなく、心は遊んでいる。こういう状態が創造的思考にもっとも適しているようです。
前もって、考えかけたことをもち、三上の人になれば、ふと妙案が浮かんでこないとも限りません。
「三中」という状態も思考の形成に役立つと考えられています。無我夢中、散歩中、入浴中の三つの状態です。
散歩や馬上では、肉体が一定のリズムの中にあり、それが思考に良いようです。
入浴中は血行がさかんになって精神も昂揚するようで、それが思考にとって良い状態となります。
伝説によると、アルキメデスは入浴中に比重の原理を思いついたことになっています。