前日のコラムで、東芝とGEの現状の比較をしました。
では、最強のものづくり企業のひとつであるトヨタ自動車は、デジタル革命が加速度的に進展していく中で、今後どのような企業になっていくのかみてみたいと思います。
デジタル革命の進展でIT企業なども自動車産業に参戦する時代になりました。自動運転などの最新技術は、日本が得意とする製造現場のモノづくり力だけでは太刀打ちできません。
トヨタも危機感を募らせ、豊田章男社長は事業説明会で自らに言い聞かせるように「創業から80年。自動車産業は転機を迎えた。人工知能(AI)やロボティクスなどの変化を拒んではならない」とつぶやいたといいます。
『AI時代に生き残る企業、淘汰される企業』 加谷珪一(著)では、“製造業という概念が消滅しトヨタ自動車でさえ下請け企業になるかもしれない”という考え方を示しています。その要点を以下に紹介します。
『トヨタが下請けになる日』 工場のIT化とAI化が最終的に行き着く先は、もの作りに関するノウハウの完全汎用化である。 そうなってくるとこれまで一部のメーカーが独占してきた高度な生産技術が広く一般に共有されてしまう。しかもコストが劇的にさがるので、生産技術すら必要なくなり設備の量でカバーするという考え方が成立するかもしれない。つまり工場のコモデティ化である。 重電の分野ではすでにその片鱗が見えているが、顧客に対してどのようなサービスを提供できるかが新しい時代における競争力の源泉であり、この部分こそ真の差別化要因となる。 このような時代において製造業は完全にサービス業にシフトするか、極めて高度な製造技術を持った開発型企業を目指すのか二者択一を迫られる。 これはトヨタのような超優良企業ですら例外ではない。 『AI時代に生き残る企業、淘汰される企業』 加谷珪一(著)より |
消費者サイドから見ると、「どのメーカーを選んでも大差ない、いつでも手軽に購入できる商品」、すなわち工場のコモデティ化は、電機業界の生産技術が広く一般化したため日本企業が競争力を失った状況と重なります。
しかし、トヨタは生産技術力も超一流ながら、最大の強みは、開発・製造においてのエンドレスに改善していくような、長期的に鍛え上げた「組織能力」です。
私はトヨタの場合は、自動運転車などを含め下請け企業に甘んじることなく、デジタル革命をチャンスに変える「組織能力」を十分に持っていると感じています。